診療・ケア 循環器科

診療・ケア

Cardiology.循環器科

が苅谷動物病院グループでは年間約5,900件の心臓病の診察治療を行いますが軽度の異常の場合、症状に気付かず普段の生活と変わらず過ごしていることもよくあります。心臓病は症状が見えにくい病気ですので定期的な健康診断をお勧めしております。

ペットにこんな症状はありませんか?

注意するべき症状

  • 呼吸が苦しそう
  • 呼吸が早い
  • 咳が増えた
  • 疲れやすくなった
  • 寝ている時間が増えた
  • 元気がない
  • 食欲がない
腫瘍科の猫

僧帽弁閉鎖不全症

心臓の働きとしては、肺で酸素を受け取った血液を全身に送り出すポンプの役割があります。心臓には四 つの部屋と四つの弁があり、弁が開閉することで一方通行の血液の流れを作っています。その弁の一つである僧帽弁の閉まりが悪くなることを僧帽弁閉鎖不全(MR)といい、左心室から左心房へ血液の逆流が起こります。僧帽弁閉鎖不全症はさまざまな要因で起こりますが、ここでは最も多い僧帽弁粘液腫様変性(MMVD)が原因となるものについて触れていきます。

僧帽弁粘液腫様変性(MMVD)は、高齢のチワワやトイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンドなど小型犬で特に多く、キャバリア・キングチャールズ・スパニエルでは若齢から発症することもあります。僧帽弁が加齢とともに分厚く縮んで完全に閉まらない状態になり、血液が逆流し始めます。血液の逆流は徐々に悪化していき、最終的に心不全を起こします。

  • 早期診断のポイント

    僧帽弁閉鎖不全症は早期発見し、悪化する前に治療を開始することが重要ですが、軽症な場合は特に症状がないことがほとんど。心不全を起こし始めている徴候として、『疲れやすくなった』り、『寝ている時間が増えた』りすることもありますが、重症になり呼吸が苦しくなってしまうまで気付けない場合もあります。
    『咳が増えた』と来院し、僧帽弁閉鎖不全症が見つかることも多いですが、実際は気管や気管支の病気が併発することで咳が起こっている場合がほとんどです。

     最も簡単に僧帽弁閉鎖不全症を早期発見する方法は心音の聴診です。聴診器により血液の逆流が心雑音として聴こえてきます。ある程度心雑音が強くなってきた場合には心臓のX線検査や超音波検査を行うことで僧帽弁閉鎖不全を診断することができます。『6歳以上になった』『小型犬』などのチェックリストに当てはまる犬は、定期的に健康診断を受けることが早期発見につながります。


症状

  • 小型犬
  • 6歳以上になった
  • 咳が増えた
  • 疲れやすくなった
  • 寝ている時間が増えた
外科・診療中の猫

  • 悪化した場合の症状

    心臓が重度に悪くなりポンプとしての役割を果たせなくなった状態を心不全といいます。心不全を起こすと心臓が血液を十分に送り出すことができず、肺に血液が溜まりすぎることで肺水腫を発症したり、脳に酸素が十分に届かず失神を起こしたりします。

    肺水腫とは肺の中に水が溜まることで、溺れているように呼吸が苦しくなり窒息死してしまう怖い病気です。元気や食欲がなくなり、そわそわと落ち着かなくなったり、横になって眠ることができなくなったり、「ハァハァ」とパンティングが止まらなくなることもあります。最終的には肺に溜まった水を口から吐き始めることもあります(喀血)。安静にしていても1分間に40回以上呼吸をしている場合には、呼吸が苦しい可能性があります(1分間の呼吸数を確認するには15 秒間呼吸の回数を数えて 4倍してみましょう)。肺水腫は急激に進行していきます。このような症状が見られた場合には、様子を見ずに動物病院へ相談しましょう。

    心不全は起こしてしまうと命に関わることも多く、治療を始めても余命が1年前後に短くなるといわれています。肺水腫や失神などの心不全を未然に防ぐためには、早期発見と治療が重要です。

  • 治療について

    僧帽弁閉鎖不全症が軽度なうちは特に治療を必要としませんが、この病気は徐々に進行していきます。だんだんと血液の逆流が増え、全身に送り出せなかった血液が心臓に溜まり、心臓が大きくなってくると治療の必要が出てきます。

    飲み薬による治療としては、心臓の収縮力を上げることで血液を送り出しやすくする『強心薬』、血管を広げることで血液を送り出しやすくする『血管拡張薬』、血液の量を減らすことで心臓の負担を減らす『利尿薬』がよく使われます。病気の進行に合わせ薬を調整していくことで進行を遅らせることができます。定期的に超音波検査などの心臓検査を行い、進行程度をチェックすることが重要です。手術によって弁の閉まりを良くすることも可能です。飲み薬だけでの治療が難しい場合や根本的な治療を望まれる場合には獣医師から提案させていただきます。
    心臓の手術はリスクや費用の問題がありますが、飲み薬を飲ませ続ける必要がなくなったり、余命が延びる可能性もあります。

心筋症

犬では、先述のように僧帽弁粘液腫様変性という弁膜の異常が多いですが、猫では病態が全く異なります。猫で最も多い心臓病は心筋症です。心筋症は、心臓の筋肉の異常によって心機能が進行性に低下していく病気です。心筋症の原因は不明な点が多いですが、一つに「遺伝」が示唆されています。ラグドールやメインクーンでは原因となる遺伝子領域も一部解明されつつあります。

猫ではタウリンというアミノ酸の欠乏によって後天的に心筋症を発症することも知られています。そのため食事は必ず総合栄養食を主食にするように心がけましょう。また、二次的な要因として甲状腺機能亢進症や高血圧の猫は、心筋肥大を併発し心不全を起こすことがあります。

心筋症の罹患率は15%程度と非常に高いですが、末期になるまで症状が現れないため多くは見過ごされます。また若齢〜高齢まで幅広い年齢で発症し、1歳齢以下で発症するケースもあります。そのため若いからといって必ずしも安心することはできません。若いうちから定期的に動物病院で診察や健康診断を受けることが重要です。

  • 早期診断のポイント

    猫の心筋症はその高い発症率と若齢でも発症することから、早期発見が大切です。
    しかし今日まで、さまざまな理由から早期発見は困難でした。心筋症を発症していても末期まで症状が出にくいこと、心筋に「異常がない」猫でも半数以上が聴診で「心雑音を認める」こと、逆に「異常がある」猫でも聴診で「心雑音を認めない」こと、また、X線検査での心拡大の診断が難しいことなどがその理由です。

    近年では、血液検査の研究が進んでいて早期発見のためのツールとして期待されており、約90%の確率で心筋症を検出できるという研究データがあります。そのため健康診断では心臓の血液検査をおすすめしています。

    さらに、検査精度を上げる目的で定期的な心臓のX線検査と超音波検査を実施し、確定診断を行います。このように、早期発見のためにはさまざまな検査の結果を解析することが鍵になります。ここ数年は純血種の猫が増加しており、若齢猫においても心臓病が多く診断されているので、特に注意が必要です。

  • 悪化した場合の症状

    猫が心臓病で症状を現す時は末期の状態が多く、代表的な病状は心不全、血栓症そして突然死です。

    心不全は、心臓が十分に血液を送り出せなくなった状態で、その血液循環障害の結果、肺や胸腔内に体液が貯留し呼吸困難を引き起こします。治療が早期であれば回復してくれる場合も多いですが、治療のかいなく窒息死してしまうことも少なくありません。また回復して治療を続けても、心臓病がすぐに進行して再発することも多いです。

    血栓症は、動脈内に血栓が詰まってしまうことです。心筋症で心臓が拡大し、心臓内の血流に異常が生じて血栓が発生することが原因です。心臓内で形成された血栓が動脈内に流れると、脳、腎臓、腸、手足などの血管に詰まる可能性があります。特に両後肢に向かう血管に詰まることが多く、非常に強い痛みが生じるため、突然「ギャー!」と今まで聞いたことがないような雄たけびを上げながら、苦しみます。また、血栓により後ろ脚がまったく動かなくなり冷たく紫色に変色してしまうと、救命率は極めて低くなります。

    突然死は、何の前触れもなく急に亡くなってしまうことです。心臓病で突然死が起こる理由の一つに、不整脈が考えられています。心筋症の猫では病気の進行によってひどい不整脈を併発することがあるためです。不整脈を早くに見つけ、治療を行うことで予期せぬ死から愛猫を守ることができるかもしれません。

    三つの病状をはじめ、猫の心筋症は治療が遅れてしまった場合、猫にとってもご家族にとっても予期せぬ辛い時を迎えます。従って、一頭でも多くの猫の心臓病が早期に発見され治療を施されることを強く望みます。

  • 治療について

    猫の心筋症は残念ながら革新的な研究が進んでおらず、予防や治療方法について十分な情報がありません。そのため根本的な完治や回復を目指した治療は大変困難であり、対症療法による治療が主に行われます。

    早期治療を開始できた場合は、病気の進行を遅らせるために心筋の保護を目的にした治療を中心に行います。病気が進行し心拡大が顕著になった場合は、血栓予防薬、強心薬、利尿薬などの投薬が行われます。

循環器科からのご案内

循環器科は、心臓、血管、肺などの循環器に関する病気の診断、治療を行う診療科です。
患者様一人ひとりに寄り添った、質の高い医療を提供し専門医による丁寧な診察とわかりやすい説明を心掛け、最新の設備と技術を用いた診断・治療を提供しています。
当科では、循環器に関するあらゆる病気の診断・治療を行っております。心臓や血管のことで不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。