苅谷動物病院グループ 江東総合病院にて皮膚科、耳科診療を主に担当している今井昭宏獣医師が、アジア獣医皮膚科専門医資格を取得しました。
認定基準などとても厳しく日本人の合格者も近年出ていない中、大変な努力の甲斐あって取得したことや、今井先生のお人柄に触れるお話を聞きました。
アジア獣医皮膚科専門医とは、高い水準の国際的な皮膚科臨床能力を備えた動物の皮膚科医のことです。日本国内には、わずか7名のみ。近年、アジア獣医皮膚科専門医協会が国際獣医皮膚科専門医協会に認められ、その傘下に加わりました。
その結果、アジア獣医皮膚科専門医になるためには、世界的に認められた欧州や米国の獣医皮膚科専門医プログラムと同様の規定内容を満たし、さらに専門医試験(海外の専門医によって作成され、すべて英語、2日間の日程で合計13時間に及ぶ)に合格することで晴れて認定されます。近年、試験はさらに難易度が増し、毎年アジア圏では合格者1名という狭き門となっています。
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ゲーテの名言に、『涙とともにパンを食べた者でなければ、人生の本当の"味"はわからない』とありますように、皮膚科医になるまでの私の人生は「茨の道」でした。
大学卒業後、某大学病院での研修生活を終えた後に海外での皮膚科専門教育(インターンを含む)を受けるチャンスを得た私は、臨床研究を行う傍ら朝から晩までひたすら皮膚科(耳科を含む)の症例を診つづけて、さらに必死に論文や専門書を読み漁っていました。
当時お金もなかった私の食事は、ほとんどがパサパサした安売りのパンにチーズとケチャップを挟んだもの。それを主食に、勉強しながら食べる日々でした。休日などに、久しぶりに日本食を食べた時には、あまりのありがたさに「涙」が出ることもありました。
また、専門医になるためには高度な語学力が必須であるため、必死に英語の勉強もしました。その努力もあって海外でも実績を残せ、アジア獣医皮膚科専門医になるための「登竜門」であるレジデンシープログラム(3年間)のポジションを獲得することができました。
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晴れて皮膚科レジデントとなった私は、経験豊富な専門医からマンツーマンで指導を受けながら、高度な皮膚科症例を診て臨床医としての腕を磨き、その間、研修医の教育、臨床研究、学会発表をこなしながら、臨床研究者としても経験を積みました。
その時の食事は急いで流し込めるものが多く、「カレーやお蕎麦って、便利な飲み物なんだな〜」と悟り、時々むせては「涙」が出ることもありました(笑)。
こうしてなんとかレジデンシープログラムを修了すると、最後の大きな壁である獣医皮膚科専門医試験が待っているわけです。欧州の皮膚科レジデントでも、2〜3年かけてやっと合格できる試験で、その合格率は30%。つまり、これだけやってきたのに実力がなければ専門医になれないこともあるのです。犬や猫以外にも、馬、牛、豚、羊、山羊、アルパカ、ウサギ、フェレット、齧歯類(ハムスターなど)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の皮膚の構造や疾患について、非常にたくさんの勉強をしなくてはいけません。
獣医師になるための国家試験など比にならないほどの勉強量でした。レジデントになる人は一般的に成績がトップクラスであることが多いにもかかわらず、その膨大で広大な試験範囲と質問の難しさと凄まじいプレッシャーで、途中で諦める受験者やパニックになり泣き出す受験者もいると聞いたことがあります。
受験直前には、前を通り過ぎる散歩中の犬やテレビで動物を見るたびに皮膚科の診断が勝手に思い浮かび、教科書に書いてある詳細な内容を英語でぶつぶつと勝手に独り言が出てしまうぐらいまで、限界まで追い込んで勉強をしました。
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国際水準の専門医になる人の多くは、大学を卒業してから10年以上はかかるといわれていますが、結果的に私の場合は13年かかりました。本当に苦労の連続でしたが、何より試験に合格し、専門医になれて心からホッとしています。
この経験を経て、「歩んできた道が本当に苦しかったから、それだけすべてに "感謝"ができる」と悟りました。
もしかしたらこれが私に与えられた、最も重要な「資格」だったのかもしれません。
幼い頃からアトピー性皮膚炎を患っており、いつも両親は心配そうにしていました。高校生の時には受験のストレスもあり、症状が悪化し自力で治そうと努力するも全く治らず、様子を見かねた母親に連れられて皮膚科の先生に診てもらうことにしました。 すると、あっという間に痒みも消えて皮膚も綺麗になり「別世界だ…こんなことなら、もっと早く専門医に診てもらえばよかった… 」と感じたことをきっかけに、私も同じ苦しみを持つ患者を救いたいと思うようになりました。医学部への進学を考えましたが、動物が好きだった私は「動物の皮膚科専門医ってあまり聞かないな?よし!私が日本人初の皮膚科専門医になろう!」と決意して、高校生の時に本格的に獣医師を目指すことにしました。
飼い主様と動物が"より"安心してかかれる病院だと思います。一件あたりの診療にかける時間が比較的長く、飼い主様としっかりとお話をして動物を診ている印象です。また、獣医師の層が厚いことも魅力的だと思います。苅谷動物病院グループの内3病院には夜間救急診療があり、夜中緊急時の対応も行っているため、チーム医療として機能していると感じています。そして、それを支える獣医師以外のスタッフも充実しているのは、素晴らしいことと思います。
皮膚病は目ではっきりと見えます。その分、飼い主様の不安も大きいです。しかも誤診も多く、何が起きているのかという現象を理解し飼い主様へお示しすることも難しい。極めつけはなかなか治らない。それにもかかわらず、症例数が最も多いというのが特徴です。
苅谷動物病院では、そこに焦点を当てて皮膚科にもしっかりと力を注いでいるので、動物と飼い主様思いの「痒いところに手が届く」病院だと思っています。余談になりますが、近年飼い主様の求めるものも変化してきています。このコロナ禍により不正確な医療情報が広まった結果、混乱や不安が増す中で「何が正しい情報なのか?」と戸惑いがちですが、感染症専門医の科学的根拠に基づいた意見というものが本当に頼りになったと実感した人は多かったと思います。「しっかりとした先生にちゃんと診てもらい、説明してもらいたい」と願う飼い主様は以前よりも増えてきていると思います。
何をやっても治らず「もう手遅れです」といわれた皮膚と耳の疾患の原因を推定し治したこと。
また、治療方法が確立されていない皮膚と耳の疾患に対して、新たな治療法を見つけ出したことです。
以前、19歳10カ月まで長生きしたシーズーと暮らしていました。
長年、皮膚病で苦しい思いをした動物が治り、飼い主様が「すごく綺麗になった!」「とても良くなった!」と喜んで帰宅されることです。
私の座右の銘は「文武両道」であり、趣味の一つとして20年間続けているブラジリアン柔術があります。
現在は「パラエストラ東京」に所属し、世界的に有名な中井祐樹先生のもとで鍛錬し続けています。格闘技の中では最も黒帯になるのが難しく、その取得率は1%ともいわれています。できれば来年には「黒帯」を取って、世界マスター選手権にチャレンジしたいと思っています。
あとは、イギリス英語の勉強をするのも好きです。
サンボマスターの「できっこないをやらなくちゃ」です。
アジア獣医皮膚科専門医であるので皮膚科診療には自信を持って取り組んでおりますが、実は、耳科学も専門的に勉強、研究、診察をしています。
皮膚と耳の病気で苦しむ動物と飼い主様の思いは痛いほどわかります。アジア獣医皮膚科専門医に気軽に相談できる診療施設は、日本国内でもほとんどないと思います。なかなか治らない皮膚や耳の病気でお困りの方はぜひ一度、気軽にご相談ください。 お待ちしております!