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猫の尿路疾患

猫の下部尿路疾患とは?おしっこが出ないと命の危険も!原因、治療法から予防のストレス対策まで徹底解説

猫の下部尿路疾患(Feline Lower Urinary Tract Disease、FLUTD)とは、膀胱炎、尿石症、尿道閉塞など猫の膀胱と尿道に起こる疾患の総称です。症状は主に、頻尿(排尿行為の増加)、排尿困難(排尿に時間がかかる)、血尿などが見られます。さらに進行すると、尿量の減少、元気・食欲の低下、嘔吐、脱水などの症状が現れ、放置すると命にかかわる危険性も。
以下に、病院で多く診断する下部尿路疾患をご説明します。普段の食事、生活環境からのストレスが原因となっている場合もありますので、予防策についても詳しく見ていきましょう。

猫の下部尿路疾患の代表例 その1『尿路結石症』

人間と同様に、猫は尿路に石を作ってしまうことがあり、この疾患を『尿路結石症』といいます。膀胱内にできた結石(膀胱結石)が尿道に流れ、途中で尿道を塞いでしまうことを『尿道閉塞』といいます。尿路結石症は、いずれも命に関わる症状を引き起こしたり、手術や入院が必要になったりするような重大な疾患です。それぞれの疾患について、また、結石ができるしくみについて解説します。

尿道閉塞

尿道閉塞は放っておくと急性腎障害そして尿に排出されるはずの老廃物が血液中に蓄積されてしまう尿毒症が起こり、命に関わる危険な状態になります。以下のような症状が見られたら、直ちに動物病院に相談しましょう。
【症状】
尿意を感じても結石が詰まっていることで尿道から尿が出せないため、トイレに頻繁に行く、トイレで長い時間排尿姿勢をとる、といった症状が見られます。特にオスは尿道が細く結石が詰まりやすいため、注意が必要です。結石が詰まった尿道には痛みが生じるため、急に鳴き声を上げる、唸る、震える、伏せた姿勢のままになるなど、さまざまな様子の変化が見られることもあります。また、左右の腎臓の中に尿が溜まりすぎることで、重度の腎臓の障害が生じてしまいます。膀胱内に尿が溜まりすぎて膀胱が破裂し、尿がお腹の中に漏れてしまうこともあります。いずれも、ぐったりとしてしまう、吐いてしまうなど、著しい体調の悪化が見られます。
【診断】
尿が出しづらいという症状自体は、膀胱炎など別の病気でも見られます。身体検査、尿検査、X線検査や超音波検査によって膀胱や尿の状態を評価し、結石の有無を確認します。閉塞が疑われる場合には血液検査を行い、腎臓の状態を確認します。
【治療】
尿道カテーテルという細い管を尿道に挿入し、詰まった結石を膀胱の中に押し戻します。これで尿道内の結石は除去され、尿は開通した尿道を流れることができるので腎臓の負担が取り除かれます。腎臓が既に障害を受けている場合などは、数日入院治療を行いカテーテル経由で排尿させます。カテーテルを外しても問題なく排尿できれば、再発予防治療に進みます。膀胱に押し戻した結石が再度詰まる危険があるようなものであれば、手術による摘出を行います。

膀胱結石

【症状】
頻尿、血尿などの尿の異常が見られることがあります。一方で、全く症状がなく過ごし、巨大な結石が健康診断で偶然見つかることもあります。
【診断】
X線検査や超音波検査によって膀胱の状態や結石の有無を確認することで診断します。また、尿検査を行い、尿の性状から結石の原因物質を推測します。
【治療】
結石が膀胱の中にとどまっていたとしても、今後その結石が尿道閉塞を引き起こすリスクがあります。また、慢性的な刺激が膀胱に加わって膀胱炎が生じたり、不快感の原因になったりすることがあります。尿路結石症用の療法食に食事を切り替えたり、細菌性膀胱炎がある場合はその治療を行ったりすることで結石が溶ける場合もありますが、多くは膀胱を切開して結石を取り除くような手術が実施されます。

結石はどのように作られる?どうすれば予防できる?

猫の尿路結石の多くは「ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石」か「シュウ酸カルシウム結石」という種類で、尿中のミネラル(マグネシウム、カルシウムなど)を主体とした結晶と蛋白質によって形成されます。なぜ、尿の中にこれらの結石が作られてしまうのでしょうか。
健康な猫でも、尿の中には結石の原材料がバラバラになって存在しています。しかし、
「①材料を溶かす液体(=尿の量)が少ない」または「②尿の中に存在する原材料が多すぎる」と、これらの原材料どうしは結合し結石になってしまいます。逆にいえば、 「❶水分摂取量を増やして尿の量を増やす」 「➋尿の中に存在する結石の材料を減らす」ことができれば、結石が作られるのを防ぐことができます。
以下は、水分摂取量を増やす方法と結石形成の元となる材料を減らす方法や注意点です。

ポイント1.水分摂取量を増やす
  • 食事と一緒に水分を摂れるようにする
    ドライフードではなくウエットフードを選択したり、食事の風味が変わらない程度に水を足してみたりすると良いでしょう。
  • 適切な体重を保ち、適度な運動を持続的に行う
    太り気味の場合は運動量も不足しがちになります。運動量が減ると飲水量も減ってしますので、注意しましょう。 また、寒い季節は運動量が低下しやすく、尿路結石が原因で受診する猫が増える傾向がありますので、意識して運動ができるようにしましょう。
  • 水を飲みやすい環境を作る
    猫は、水飲み場に関して少しでも気になることがあると飲水量が減ってしまいます。飲み水は定期的に交換し、常に新鮮な水が飲める環境を作りましょう。トイレの近くに飲み水が置かれていることを嫌う場合もあります。また、流れるタイプの飲水器から好んで水を飲む猫もいます。飲水量が少ないと感じる場合は動物看護師や獣医師と相談し、より水が飲みやすい環境作りを試みてみましょう。

ポイント2.尿の中に存在する結石の材料を減らす
  • 食事、おやつ、飲み水に注意する
    じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。

尿の中に存在する結石の材料を減らす

  • 食事、おやつ、飲み水に注意する
    じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど、「カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム」などのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になると、尿の性状は「酸性」ではなく「アルカリ性」になります。尿がアルカリ性になるとストルバイト結石の材料が作られやすくなり、結果的にストルバイト結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモ、肉類も、シュウ酸カルシウム結石の材料が多く含まれていたり、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまったりする傾向があるので、過剰に与えないよう注意しましょう。しかし、これらの成分は生きるうえで必要な栄養素ですから、過度に制限するのではなく、適度に摂取する必要があります。例えば、マグネシウムはストルバイト結石の材料となるため制限したいところですが、マグネシウムが極端に不足すると別の病気の原因にもなってしまいますし、今度はシュウ酸カルシウム結石ができやすくなってしまいます。尿路結石症用の療法食はこれらのミネラル成分が適度に調整されています。また、尿路結石症用の療法食ではない市販のフードの中にも、結石ができにくいようミネラルバランスを考慮したものがあります。

猫の下部尿路疾患の代表例 その2『膀胱炎』

猫の膀胱炎は、猫と暮らしていると一度は経験するといって良いほど多く認められる病気の一つです。原因は細菌や結晶、結石、ウイルスなどが考えられてきましたが、最近では精神的ストレスでも膀胱炎を起こすことが分かっています。

細菌性膀胱炎

尿道を上がってくる細菌が原因で、猫では10歳以上で罹患率が高いと考えられています。
【症状】
トイレに行っても尿を出すのに時間がかかり、残尿感があるため頻繁に行ったり、トイレ以外の場所で排尿してしまったりする様子を見て飼い主様が気づくことが多いです。血尿や白く濁った尿、通常よりも強い臭いがする尿が認められます。排尿時や排尿後に痛がって鳴く、腹部や陰部を気にして過度に舐める、食欲不振、元気の低下、等が認められることもあります。
【診断】
尿検査により診断されます。
【治療】
適切な抗生剤を2~3週間使用します。
この病気の予防策として、動物病院での定期的な健康診断により基礎疾患(糖尿病、腎不全など)が無いかを確認し、あれば速やかに治療を行い体内に細菌感染が起こりにくい環境をつくっておくことが重要です。また、飲水量を増やし、排尿回数を増やすことで尿道の細菌を洗い流す作用を期待します。

特発性膀胱炎

10歳以下で多く発生し、尿検査をしても、細菌、結晶などがみられません。何らかの精神的ストレスにより脳や神経が刺激され、膀胱粘膜や粘膜を被っている粘液層(GAG)に影響を及ぼすことが原因と考えられています。GAGが剥がれると、尿が膀胱の粘膜上皮を直接刺激して膀胱炎を悪化させたり、長引かせたりします。
【症状】
頻尿などの症状を示します。
【診断】
まずは尿検査、画像診断(膀胱や尿路の異常の有無を確認)等を行いますが、これらの検査を行っても細菌感染や尿路結石などの明確な原因が見つからない場合、猫の生活環境に関する飼い主様からの聞き取り事項も含め総合的に特発性膀胱炎と診断します。
【治療】
痛み止めや抗炎症薬、必要に応じて抗うつ薬や抗不安薬を使用すると同時に、ストレス要因を確認し、猫の生活環境を改善します。
特発性膀胱炎は再発性が高く、継続的なケアと予防が重要です。定期的な診察と生活環境の見直しを行い、猫の健康を維持するための対策を講じることが推奨されます。

猫の下部尿路疾患は、日々の生活環境と大きな関係が。ストレスは大敵!

猫は毎日、体重1㎏あたり50~60mlの水分を摂取することが推奨されています。静かで落ち着いて水を飲める場所に器を設置し、常に清潔で新鮮な水を用意してください。硬水のミネラルウォーターは結石ができる原因となるので与えてはいけません。器の高さや形状、素材が猫の好みに合っているかチェックし、より気に入るものを用意しましょう。季節や好みによって水の温度を変えてあげるのも工夫の一つです。なかなか水を飲もうとしない猫には、日常的にウェットフードを与えることで、全体的な水分摂取量を増やすことができます。

排尿しやすいトイレの工夫

猫のトイレはにおい・砂の触り心地や深さに気をつけ、清潔で快適な状態を保つことが重要です。特に多頭飼育の場合は、飼育している猫の頭数+1個はトイレを設置するようにしましょう(例:2頭の場合は、トイレを3個つなげて置くのではなく離れた3か所に置きます)。できるだけ静かな場所に設置し、猫が我慢せずに適切なタイミングで排尿できるようにすることが病気の予防につながります。最近では猫の『スマートトイレ』も販売されており、専用のスマートフォンアプリに登録することで体重や排尿の記録ができ、健康管理に役立ちます。

思い切り遊べる環境

猫は本能的に上下運動を好む動物ですので、キャットタワーを設置したり家具の配置を工夫してジャンプしたり飛び降りたりできるようにしましょう。また、猫本来の狩りの本能を満足させる遊びやおもちゃを用意して、運動不足を解消することも重要です。

安心できる場所

猫は隠れられる狭い場所を好む動物です。これは野生時代の習性から来ており、安全を確保し、ストレスを軽減するための重要な行動です。上下左右が囲まれた狭いスペース、ひとりになりたい時にゆっくりできるベッドなど、安心して過ごせる場所を確保してあげましょう。

多頭飼育の場合

食事、水、トイレ、寝場所、爪とぎ場所などが、各猫に確保されていて、その場所まで安心してアクセスできる環境が必要です。それぞれ「頭数+1個」を別々の場所に置くようにしましょう。これらの配置が適切でないと、寝床を巡ってケンカが起きたり、同居猫を警戒してトイレにアクセスできなかったりしてストレスとなる可能性があります。

その他ストレスの要因として、生活環境の変化(引越しや模様替えなど)、同居動物の増減や相性、留守番時間の長さ、飼い主様とのコミュニケーション、部屋の温度管理などがあげられます。要因は分かっているけれども良い改善方法が見つからない、うまく改善されない、などお悩みの時には、ぜひ獣医師にご相談ください。ストレスを和らげるためのサプリメントやフェロモン製品などが助けになる場合もあります。当院には動物行動学を専門に学んだ獣医師も在籍していますので、より具体的な対策のアドバイスを差し上げることが可能です。

まとめ

最後に、下部尿路疾患予防のためのチェックポイントです。
 トイレは清潔にしていますか?
 トイレの数は1頭につき1個、さらに+1個用意されていますか?
 トイレは安心できる場所に置いてありますか?
 トイレを我慢させてしまう環境ではありませんか?
 毎日、猫の排泄する様子や回数・色・においなどを気にしていますか?
 常に新鮮な水が飲めるようになっていますか?
 猫が安心して過ごせる場所・時間はありますか?
 体重過剰ではないですか?
 定期的な健康診断を行っていますか?

いかがでしたでしょうか?十分に実行できていなかったポイントは今日から早速改善していきましょう。

猫の排尿が滞ると、最悪の場合死亡することもある、非常に緊急性の高い状態になります。尿が出ていない、いつもより尿量が少ない、尿の色が変だ、など異常を感じた場合は躊躇せず、すぐにご来院ください。