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犬にとって良い食事とは?与えてはいけないものも!病気との関係や誤食の危険性まで徹底解説

犬にはどんな食事が良い?

犬の食事については、個体の状態や生活ステージに応じて適切に対応することが大切です。成長期の子犬には骨や筋肉の発育に必要な栄養が求められ、成犬や高齢犬にとっては適切な体重管理や関節の健康維持が重要ですので、栄養バランスを考慮した食事が必要です。また、病気によって食欲が低下した場合は栄養補助食品や特別な食事が必要になることもあります。愛犬の状態を把握し、適切な栄養プランを立てる上で、一緒に暮らしているご家族の観察とかかりつけの病院での定期的な健康診断は、欠かせません。食事は日々の積み重ねであり、健康維持において重要な役割を果たします。犬の生活ステージや健康状態に合わせて食事を柔軟に調整することで、愛犬に健康で幸せな生活を送ってもらうことができます。

犬は雑食性。適切な食事の与え方

犬は一般的に雑食であり、肉や野菜、果物などさまざまな食材を摂取することができます。ただし、犬に人間の食事と同じようなものを与える場合、いくつかの留意点があります。

  1. 栄養バランス
    犬に与える食事は栄養バランスが重要です。タンパク質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどがバランスよく含まれていることが必要です。

  2. 毒性のある食材
    人間には無害でも、犬には毒性のある食材があります。例えば、チョコレート、アルコール、アボカド、タマネギ、ニンニク、ブドウ、キシリトールなどは犬にとって有害ですので与えてはいけません。

  3. 適切な調理
    生の食材や食品は犬にとって消化が難しい場合や食中毒のリスクがあるため、気をつける必要があります。肉は適切に調理し、魚は寄生虫のリスクやチアミナーゼによるビタミンB1不足のリスクを減らすために加熱して与えることが重要です。

  4. 適量
    与える食事の量にも注意が必要です。過剰な摂取は消化不良や肥満を引き起こす可能性があります。

犬に与える食材には、鶏肉、牛肉、豚肉、野菜(例えば、人参、サツマイモ、ほうれん草)、果物(例えば、薄くカットしたリンゴ、バナナ)、穀物(例えば、米、小麦)、魚介類などがあります。しかし、与える際には上記の留意点を念頭に置いてください。気になることがある場合には事前に獣医師に相談することもおすすめします。

野菜や果物はヘルシー?

健康的というイメージで、野菜や果物を主食とともに、またはおやつとして与えている方は多いと思います。しかし、その中には間違った与え方をするとさまざまな障害を引き起こすものもあるので注意が必要です。

アボカドやブドウ、レーズンは摂取することにより中毒を引き起こします。さつまいもやほうれん草はシュウ酸の含有量が多く、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクが高まります。また、じゃがいもなどの根菜類は意外とカロリーが高いということをご存じですか?例えば100gの中サイズのじゃがいも1個のカロリーはおよそ70kcalです。70kcalは、体重4kgの犬の1日に必要なカロリーの20%に相当します。その他にカロリーの高いものは、さつまいも(約130kcal/100g)やおから(約100kcal/100g)などがあります。反対にカロリーの低い野菜には、ブロッコリー(約33kcal/100g)、レタス(約12kcal/100g)、キャベツ(約23kcal/100g)などがあります。ちなみにブロッコリーは一口大で約3kcal、キャベツの千切り一握りで約10kcal程度です。野菜だから大丈夫、と思わず色々なことに注意しながら与えて頂きたいと思います。

犬の食事に味付けは不要

犬の食事に調味料や味付けを加えることは、一般的にはおすすめしません。多くの調味料や味付けには、犬にとって有害な成分が含まれている可能性があります。例えば、塩分や砂糖、人工甘味料、香辛料などは、犬の健康に悪影響を与えることがあります。


  1. 高塩分の食事は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。犬に与える食事に余分な塩を加えることは、高血圧や脱水、腎臓疾患などのリスクを高める可能性があります。

  2. 砂糖
    砂糖を含む食品は、犬の健康に悪影響を与える可能性があります。過剰な砂糖摂取は肥満などの健康問題を引き起こす可能性があります。

  3. 香辛料
    一部の香辛料は、犬にとって消化器官に刺激を与えたり、アレルギー反応を引き起こしたりする可能性があります。また、辛い食品は消化器官に負担をかけることがあります。

  4. 添加物
    人間の食品に含まれる添加物や人工着色料、保存料などは、犬にとって消化器官に負担をかける可能性があります。

犬の食事には、適切な栄養バランスが含まれている市販のドッグフードや、獣医師がすすめる特定の食事を選択することが重要です。もし自家製の食事を与える場合は、安全な食材で調理し、人間の食事に使われるような調味料や味付けは避けるべきです。

ドッグフードにおける総合栄養食・一般食・栄養補完食の違い

総合栄養食と表示されているものは、そのフードが栄養学的に完全な製品であることを示します。一般食は、人の食事に例えると「おかず」と理解してください。栄養補完食とは特定の栄養素のみを満たす製品のことです。つまり、一般食や栄養補完食のみを食べていると栄養バランスは偏り、さまざまな病気を引き起こすかもしれません。購入する時にはフードのパッケージの表示を必ず確認して選びましょう。

食事と病気の関係

犬が特定の病気にかかる原因はさまざまですが、食事もその一因となることがあります。以下に、食事が犬の健康に影響を与える可能性のあるいくつかの病気の原因を挙げてみます。

  1. 肥満
    カロリー過多な食事が肥満の原因となります。肥満は膵炎や関節疾患などの病気のリスクを高める可能性があります。また、肥満は犬の糖尿病の直接の原因にはならないですが危険因子の1つになります。

  2. 腎臓疾患
    高たんぱく質や高塩分の食事が腎臓に負担をかけ、腎臓疾患の原因となることがあります。また、水分不足も腎臓機能を損なう可能性があります。

  3. 食物アレルギー
    食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質が原因となることが多いです。これによって皮膚炎や消化器系の問題が引き起こされることがあります。

  4. 消化器疾患
    高脂肪の食事は、膵炎などの消化器系の疾患を引き起こす原因となることがあります。

  5. 尿路結石
    代表的な尿石にストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石があります。
    カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムなどのミネラル成分が過剰に含まれている飲食物(じゃこ、煮干し、海苔や硬水のミネラルウォーターなど)の与えすぎには注意が必要です。これらの成分が過剰になるとストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。また、葉を食べる野菜(ほうれん草、水菜、キャベツ、ブロッコリー、レタスなど)やサツマイモも、尿をシュウ酸カルシウム結石ができやすい性質に変えてしまう傾向があるので過剰に与えないよう注意しましょう。

これらの病気の原因には他にもさまざまな要因が関与しますが、食事がその一部を占めることがあります。犬の健康を維持し、病気のリスクを減らすために適切な食事を与えることが重要です。

与えてはダメ!犬にとって危険な食べもの

犬が食べると危険な食べものには、以下のようなものがあります。

  1. チョコレート・ココア(カカオ類)
    チョコレートやココアに含まれるテオブロミンという成分は、犬にとって有毒です。摂取すると、神経系や心臓に影響を及ぼし、中毒症状を引き起こす可能性があります。特に、ダークチョコレートやビターチョコレートにはテオブロミンが多く含まれています。

  2. タマネギ・ニンニク・ネギ類
    タマネギやニンニク等のネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物や有機硫黄化合物は、犬の赤血球を破壊する可能性があります。長期間にわたる摂取や大量摂取は、貧血を引き起こす恐れがあります。野菜スープやシチューなど調理されたものや調味料として使用されたものでも注意が必要です。

  3. アボカド
    アボカドには、犬にとって有毒な成分であるペルシンが含まれています。消化器系や心臓に影響を与える可能性があります。

  4. レーズン・ブドウ
    レーズンやブドウには、原因不明の腎臓障害を引き起こす可能性のある成分が含まれています。レーズンを含むお菓子やパンなどの加工食品も注意が必要です。

  5. アルコール
    アルコールは犬の体に非常に有害です。アルコール中毒症状を引き起こすだけでなく、呼吸困難や体温の上昇など、重篤な症状を引き起こす可能性があります。意図的に与えることはもちろん、誤ってアルコールを摂取することもありますので、注意が必要です。

  6. コーヒー
    コーヒーは犬にとって有毒な飲み物です。コーヒーに含まれるカフェインは、犬の神経系や心臓に深刻な影響を与えることがあります。犬がコーヒーを摂取すると、過剰な興奮、心拍数の増加、呼吸困難、嘔吐や下痢、発作等の症状が現れる可能性があり、重篤な場合、命にかかわります。

  7. キシリトールを含む食品
    キシリトールは人間にとっては低カロリーの甘味料ですが、犬にとっては有毒です。キシリトールを摂取すると、急激なインスリンの分泌が起こり、低血糖を引き起こす可能性があります。さらに、高用量では肝障害を引き起こすことがあります。キシリトールはガムやキャンディ、口腔ケア製品などに含まれていることが多いです。

これらの食材や物質は、犬の健康に悪影響を与える可能性があるため、絶対に与えないようにしましょう。犬がこれらの食材を誤って摂取した場合は、速やかに獣医師に連絡し、適切な処置を行う必要があります。

異物の誤食に注意(異物誤飲・異物誤嚥)

『異物誤飲』とは食べ物でないものを飲み込んでしまうことです。『異物誤食』『異物誤嚥』と呼ぶこともあります。犬では串・おもちゃ・果物の種・薬・石・布などが多く、好奇心と食欲からか若い犬により多く見られますが、どの年齢でも起こり得ます。
症状として最も多く見られるのは嘔吐です。他に、食欲不振、元気消失、よだれ、下痢、黒色便などがあります。薬を誤飲した場合は、薬品ごとに異なる中毒症状を引き起こします。特によだれがひどい場合、食べてすぐに吐き出す場合、嘔吐物が緑色であったり糞便臭がしたりする場合には注意が必要です。動物の吐く様子は診断の助けになりますから、必ず『どんなものを、どんな時に、どれくらい』吐いたのかを獣医師に伝えて下さい。
嘔吐などの症状が出ている場合、まず異物が原因で起きているのかどうかの診断が重要です。入念な触診の後、レントゲン検査、バリウム検査、超音波検査等、各種画像検査を実施します。石や金属はレントゲンで明らかに映りますが、木・布・プラスチック・ゴムはレントゲンには映りにくいため、若い動物で嘔吐を繰り返す場合は異物誤飲の可能性を常に考えなくてはなりません。
最近では、異物ではなく食べ物を詰まらせるケースが非常に多く、問題となっています。とうもろこしの芯、梅干しや果物の種、ジャーキー、砂肝などが代表的です。ジャーキーや砂肝を丸のみした場合に食道に詰まらせることがあり、よだれや嘔気、食べた直後に吐き出す等の症状で来院されます。食道に詰まったまま放置すると、時間経過とともに食道が穿孔する可能性が高くなり、胸膜炎をおこし、致死的な状態になります。とうもろこしの芯や果物の種の場合、「消化するかも?」と様子を見ているうちに、数日後から糞便臭のする吐物を吐いたりして来院されることがあります。
また、異物が腸に詰まると、腸の中身が通過できなくなり腸閉塞という命にかかわる危険な状態になります。頻回・多量に嘔吐を繰り返し、ぐったりして急速に体調が悪化することが特徴です。時間が経つと腸の閉塞している部分の血液の巡りが悪くなり、最悪の場合、穴が開いてしまうこともあるため緊急手術が必要となります。
いずれの場合も早期に診断されれば予後は良好ですが、全身状態が悪化している場合は検査・診断を急がなければなりません。
人間が気にかけないようなものでも、動物にとっては興味の対象になることがあります。食事の後の不始末や、不適切なおやつのあげ方によって誤飲を引き起こさないよう、ご家族の方は充分ご注意下さい。

犬が誤食すると危険なもの10選

  1. 焼き鳥の串・アイスクリームの棒
    串や棒は食道や消化管に刺さって損傷したり、腸閉塞を引き起こしたりするおそれがあります。

  2. とうもろこしの芯
    とうもろこしの芯は硬くて消化が困難なため、犬が誤って食べると腸閉塞や消化管穿孔を引き起こすおそれがあります

  3. 果実の種
    犬が果物の種を食べてしまうと、大きさによっては消化管に詰まるリスクがあります。また、リンゴやプラム、桃、アプリコットなどの種の核にはシアン化合物という毒素が含まれており、犬の体内で代謝されると吐き気、嘔吐、下痢、呼吸困難、神経系の症状などの中毒症状を引き起こす可能性があります。

  4. 魚の骨・鶏の骨
    魚の骨は比較的柔らかいですが、口や食道、消化管に刺さる可能性があります。鶏の骨は調理されると脆くなり、鋭い破片になることがあります。これらの鋭利な破片が消化管に詰まると、腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす可能性があり、緊急の状態となることがあります。

  5. ボール等のおもちゃ・ゴム製品
    遊んでいるうちにおもちゃや家具の部品などのゴム製品を誤って飲み込むことがあります。ゴム製品は消化器系で十分に消化されず、消化管に詰まったり穿孔したりするおそれがあり、内出血や腹膜炎を引き起こすことがあります。

  6. ペットボトルのフタ
    小さく、硬く、滑りやすいため、飲み込むと食道や消化管に詰まるリスクが高まります。小型犬では特に要注意です。

  7. 靴下やタオル・ぬいぐるみ等の布製品
    布製品は消化器系で充分に分解されず、消化管に詰まるおそれがあります。

  8. 人間の薬
    人間の薬には犬にとって有害な成分が含まれている場合があり、薬物中毒の症状が現れる可能性があります。

  9. 家庭で使われる化学物質
    家庭で使われる多くの化学物質は犬にとって有害です。例えば、清掃剤や殺虫剤、肥料などは誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。

  10. 植物
    一部の植物は触れる、噛む、または食べることで、犬に有害な影響を与える場合があります。例えば、チューリップ、スイセン、スズラン、アザミ、ポインセチア、ユリ、ツツジ(レンゲツツジ)、アイビーなどは毒素を含んでいるため、中毒症状を引き起こすことがあります。庭や家の中にこれらの植物がないか確認し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。

犬が何を食べてしまったか不明な場合や、誤食が疑われる症状が現れた場合にはすぐに獣医師に相談することが重要です。食べた異物の残骸が残っている場合にはそれを持って動物病院へ行くことで、診断の助けになることもあります。

まとめ

以上、犬の食事と食生活において注意するべきことをお伝えしました。日々の食事は、愛犬の生涯の健康と幸福に直結する重要な要素です。正しい知識を持ち、適切な食事を提供することで、愛犬の心身の健康を維持し、より良い生活を送ってもらうことができます。
当院には犬の食事、栄養管理について専門知識を持つ『栄養マイスター』が在籍しています。愛犬の食事選び、与え方などにつきご家族様のライフスタイルも考慮した上でアドバイスを提供し、サポートさせていただきます。愛犬の食事について少しでも不明な点がありましたら、遠慮なく当院スタッフにご相談ください。